こんにちは。takanoです。
先日、アナリティクス アソシエーション(a2i)のセミナーに登壇するという非常に名誉な機会をいただきました。
界隈の著名な方々にもご来場いただき、初めての本格的なセミナー登壇としては、とても贅沢な体験をさせてもらいました。
#a2iseminar pic.twitter.com/fZK29QeVyt
— FG🐡 (@fuguti) 2019年12月4日
当日は唯一の事業会社(インハウス)側からの講演ということで「理想のインハウス SEO 担当を目指すことで描ける未来」というテーマでお話させていただきましたが、a2i 向けだったり上級者の方でも楽しめそうなネタを仕込んだりなど、少しトピックを盛り込みすぎてしまいました。
なので今回は、お伝えしたかった主旨に絞って、まとめていきたいと思います。
(主な対象は私と同じ、中小企業のインハウス SEO 担当者です)
インハウス SEO、やること多すぎ問題
サイト外の範囲
SEO 担当者は検索エンジン経由のオーガニック流入しか見ていないと思われがちです。
これは、Google 検索の仕組み から考えると間違いで、検索エンジンのオーガニック部分だけ見ていれば済むわけではありません。
Google 検索はコンテンツの関連性だけでなく、ウェブ上の評判も加味して、そのサイト(ブランド)が上位に表示されるに足る信頼性を持っているかを判別しようとします。
まとめると、Google 検索という製品は、機械学習もフルに活用しながら以下を行っています。
- 広くあまねくインターネットや物事を見たうえで
- 検索クエリとコンテンツの関連性やサイト品質を考慮し
- 検索ユーザーが求めるであろう結果を表示している
なので、インハウス SEO 担当としては、全部のチャンネルを意識し、自サイトの評判も気にかけないといけないわけなのです。
[参考] GoogleアルゴリズムでE-A-Tは重要な要素。E-A-Tを高めるための実践的Tipsとは?
サイト内の範囲
SEO 担当者は title タグや meta タグしか触ってないと思われがちです。
これは以前に 別の記事 で書いたのですが、Google 検索が製品でありサービスである以上、顧客(検索ユーザー)の求めるサイトを上位に表示しようと改善を続けるのは当然のことです。
なので、サイト運営者としてもなるべく普遍的な「良いサイト」を目指す必要はありますし、自社の顧客のことを考えても、そうする必要があるはずです。
具体的には、以下のような項目に配慮する必要があります。
1. 品質の高いコンテンツを用意する
- 情報の関連性や権威性・正確さを担保
- 他のユーザーの評価を得る(リンク・引用・言及)
2. ユーザビリティーを整える
- 閲覧の可用性(環境に依存しない・アクセスが容易)
- セキリュティ(https やハッキング対策)
- サイトの読み込み速度
これらは、SEO 担当者だけで解決できる領域ではないですよね。
社内環境と評価
SEO 担当者はとにかく流入だけ増やせば良いと思われがちです。
しかし、SEOの成果は、決して検索エンジン経由のオーガニック流入を増やすことだけではありません。
事業者としては売上に繋がらなければ施策としての意味が薄れてしまいますし、成果を見える化するためにも売上への換算は必要になります。
また、流入だけにこだわった結果、顧客の満足度を損ねてしまうことも避けなければいけません。これはサイト名やブランド名の指名検索において悪い影響を与えかねないからです。(ネガティブなクチコミなど)
さらにもう 1 つ厄介な問題は、指名検索は広告やプロモーションにも強く影響され・依存するということです。
にも関わらず、SEO 担当者がそうした施策に影響力を持って介入できるケースは多くないように思われます。
そうした場合、我々インハウス SEO 担当にできることの 1 つは、検索結果や他のチャンネルにおいての反応を各担当者に届けて、もし悪い兆候があれば改善を促すような活動です。
プロモーション以外の部分でも、コンテンツであったり機能であったり各担当者へのフィードバックや改善要望は発生するので、組織を横断して調整を繰り返すことになります。
その際に障壁になるのが、世間にはびこる SEO への誤解や偏見です。
関係各所の認識や反応も様々ですし、それによって SEO 担当に求める要求も変わってきます。
- 「キャンペーンやるから〇〇で上位にしといて」
- 「リンクだけ貼ってれば上がるんでしょ?」
- 「なんでコンテンツに口出してくるんですか?」
- 「URL なんてどうでも良くない?」
※ あくまでサンプルです。弊社のメンバーは、みんな協力的なので大好きです。本当です。
なので正しい認識を社内に広めていくことが必要ですが、そのためには正しい情報を発信する努力と、自身の説明に納得感を持たせるための影響力も必要になってきます。
以上を踏まえて、このようなインハウス SEO 担当のつらい状況を打破するために私が実践した内容含め、具体的なアクションの例を紹介させていただきます。
理想のインハウス SEO 担当とは?
情報収集と外部交流
突然ですが、SEO 情報って、検索エンジンだと探しづらくないですか?
公式や専門家が各チャンネルで発信した情報のうち、良いものだけが上位に表示されるわけでもなく、「何でこのサイトが?」というサイトが出てきたり、まさに玉石混交です。
そうした状況への思いもあり、過去に 情報収集についての記事 も書いたのですが、やはり Twitter はオススメです。
情報が入り乱れて、すぐに新しい都市伝説が生まれがちな界隈だからこそ、正しい一次情報を入手する必要がありますよね。
で、それを Twitter でツイートしたり RT したりすることで、気付いたらけっこうフォロー・フォロワーの輪が広がっていったりします。
周辺領域としてアクセス解析や Web 技術にも関わるので色々なイベント・セミナーに行くのですが、Twitter で既に繋がっていると、そうした際の挨拶や交流がはかどります。
そうして少しずつ交流の輪を広げていくと、ただ参加するだけでなく、LT などの登壇や運営のお手伝いなどの機会にも繋がります。(実際に繋がりました)
本日企画の @takano_seo さん、はりきって準備はじめております🌟 #inhouseseo pic.twitter.com/fltEWPxLy6
— ISM (@ismeetup) 2019年11月8日
なので、ありきたりですが、インプット(情報収集)とアウトプット(情報発信と交流)を繰り返すのは重要ですし、外部との交流は社内調整などで摩耗しやすいインハウス SEO 担当には心の安らぎにも繋がります。
社内への情報共有と業務効率化
インハウス SEO 担当は業務で関わる範囲も広いため、外部で仕入れた色々な情報に気づくことも多いと思います。
そうした場合は積極的に関係部署に伝えていきましょう。
Twitter で有用な発信をすればフォロワーが増えるように、社内でも有用な発信を繰り返せば、自然とフォロワーが増えていきます。
例えば、流入からコンバージョンまでを追っている担当者であれば、以下のような項目を監視していると思います。
- 検索順位やトラフィック
- ランディングページ群や検索のトレンド
- 広告や売上のトレンド
- 集客チャンネル
- ユーザーの属性
- 流入後の直帰率やコンバージョン率
- コンバージョン件数の推移
- コンバージョン手前の行動
このうち、検索に関わる部分のレポートは他の担当者は作れないものですし、広告から検索への影響などを繋げて俯瞰できるダッシュボードはマーケティング組織全体としても必要なはずです。
検索まわりの可視化については以前 この記事 で触れましたが、これに Google アナリティクスなどのユーザー行動やコンバージョンのデータを足していくと新規ユーザー獲得についてのダッシュボードになっていくので自身の業務効率化のためにもオススメです。
そういうことに慣れている人間が日常見るポイントをまとめたダッシュボードは、周囲の人間からすれば手間が省けてありがたいはずですし、みんなの手間を省くということは組織全体で考えたときに大きな効率化も果たせているはずです。
今回は例としてダッシュボードの話を出しましたが、それ以外にも自身で仕入れた情報・身につけた知識を社内に共有していくということは、自身の見ている範囲や持っている引き出しを社内のメンバーに伝えるということです。
そうした活動は、結果として「SEO 担当者って何してるかよく分からない」という評価を「SEO 担当者ってユーザーのこと考えてるし、色々見てるんだ」という評価に上書きすることに繋がります。
サイト改善と利益貢献
SEO の成果は売上に換算しないと見えづらいことは前段でお伝えしました。
ただ、売り上げに繋がるまでのステップに自身でコントロールできない範囲があることが原因で、目標未達ということもあり得ます。
さらに、SEO を続ける以上、常に以下のような不安が付きまといます。
- アルゴリズムによる変動は?
- 全部 1 位になったらその後の評価は?
- 5 年後・10 年後の SEO どうなるの?
- この会社って、SEO で出世できるの?
なので、売上に貢献するような他の部分にも関われるよう保険をかけておくと良いと思います。
具体的には SEO の周辺領域として学ぶはずのアクセス解析などを活かしてユーザーの傾向を掴み、立てた仮説をもとに AB テストなど検証を実施し、 CRO(コンバージョン率最適化)やグロースを目指すということです。
このうち、SEO 担当者が最初に手を付けやすいのは自身に一番近い領域の CRO だと思いますが、もし成果を上げることができれば広告のチームにも喜ばれるはずです。
コンバージョン率を上げるためにユーザーの求めているものを正しく提供したり、サイトのことを気に入ってもらったりすることは、結果として検索から来訪した新規ユーザーにも良い体験を提供することに繋がります。
個人的には、そうした利益にも貢献できるしユーザーも満足できる「良いサイト」作りを目指すのが、サイトの上流から根本的な改善を目指せるので合理的かと思い、自身でも今年度から実践していました。
今年度の目標はSEO引退です。(良い意味で)
— 🅃🄰🄺🄰🄽🄾 (@takano_seo) 2019年4月3日
どちらにせよ引き出しが増えてしまう職種である SEO 担当者は、それを有効に活用するためにも周辺領域に積極的に手を出して、社内に存在感を示していけると良い未来に繋がるのかなと思っています。
なので、個人的に思う理想のインハウス SEO 担当とは、以下のような「企業にとってありがたい人」です。
- SEO や周辺領域の知識で事業に貢献できる
- 外部からの目線でサイトを公正に評価できる
- 社内の各チームと円滑に協力できる
- 良く分からない業務をしている人ではなく、ユーザー目線でサイトを改善する人である
そして、その理想に近づくために以下のようなことを日頃から意識しています。
- 技術(もしくはエンジニア)と仲良く
- 小さくても良いので実績を積み上げる
- 根拠や成果は数字(データ)で示す
- 事業に対してインパクトを出す領域に食い込む
- 分からないことは分からないと言い、分かることは丁寧に簡潔に伝える
Web の仕事なので技術への理解も必要ですし、事業者としては利益に貢献しなければいけないので、つらい部分もありますが今後も頑張っていきたいなと思います。
コンサルとの向き合い方
私と同じ中小企業で働く、他のインハウス SEO 担当の方々と話してきた中で、1 人でやっていて、しかも兼務だという方も多かったので既に手がいっぱいだという意見も当然あると思います。
ただ、そうした場合には信頼できるコンサルタントがいれば、SEO の業務を分担できるはずです。
以下は当日のスライドそのままですが、互いに協力しながら補完しあえるのが理想形かなと思います。
幸いにも、私はコンサル側の知人に恵まれており色々と情報交換もできるのですが、もし社内で自分 1 人で悩まれている方は、ぜひ積極的に情報収集と交流を行い、信頼できる良いコンサルタントを探してみてください。
質疑応答の補足
当日は、リアルタイムの質疑応答が初めてだったため、少し端折って話してしまった部分もあり、質問してくださった方には申し訳ない気持ちです。
気になったものについて、この場で補足させてください。
Q. どんなコンサルを選べば良いか?
このご質問には、「SEO の情報収集に Twitter が向いている」という前段の話と、「ちゃんとした人はちゃんとした人と繋がっている」理論から、以下の条件をお伝えしました。
- Twitter をやっている
- しっかり情報発信をしている
ただ、条件として Twitter の重みが大きすぎるのも問題があるかなと思ったので、追加で「こんな提案をするコンサルはダメだ」という例を記載します。(※ 個人の感想です)
- ツールでクロールして提示される問題点を上からまとめただけ
- 「Google はこう言っています」しか言わず、具体的な点に触れない
- ビジネスの観点を一切無視し、取り扱っていないコンテンツまで含めたキーワードと検索ボリュームのリストを「伸びしろ」として提示してくる
前段で「インハウスとコンサルはそれぞれの得意分野で分担できる」旨を書きましたが、決してビジネスと SEO で 10:0 または 0:10 で良いという話ではありません。
相互に補完するのが理想なのであって、やはりコンサル側からもある程度ビジネスへの理解が無いとインハウス側としては苦しいですし、それはパートナー企業としての誠意にもなる部分ではないかなと思います。
(最初から万全でなくとも、分かりあうことはできるはずです)
なので、「どんなコンサルを選べば良いか?」のご質問には、「誠実であること」も付け加えさせてください。
参考までに、コンサルタント選定における Google 公式のヘルプ も貼っておきます。
Q. PageSpeed Insight(PSI)で何点を目安にすれば良いか?
このご質問には、「何点という基準ではなく、自身で操作してみてサクサク表示されるか」と「計算量を減らすこと」を重視いただくようお伝えしました。
PSI では、特定の指標 と 一定のルール で最適化を提案してくれますが、公式ヘルプ にも記載されているように、決してそれが全てではありません。
なので、より細かく状況を把握したい場合には Lighthouse や WebPageTest など各種ツールも組み合わせて確認する必要がありますし、点数を目的にすると 仕組み から逆算して 特定の項目 だけ注力してしまいがちです。
そうなると本来の目的である高速なサイト読み込み(良いユーザー体験)が達成できなくなってしまうので、お試しでの比較ではなく 継続して速度改善 を行うなら、点数ではなく固定の環境で計測している読み込み秒数や Speed Index などを指標とするのが良いと思います。
ツールの良し悪しではなく、目的と用途の違いですね。(箸やスプーンやフォークのように)
計算量を減らすという点では、クリティカル レンダリング パス の最適化やブラウザ・サーバーそれぞれのキャッシュなど広範な戦略が必要になってきますので、長い話になってしまうのとセミナーのテーマとは離れてしまうので、当日は詳しく触れられませんでした。
高速化についても、SEO と同様に諸説ありますので、なるべく専門家の正しい情報を収集できるようにしつつ取り組むのが良いのかなと思います。
セミナー当日の様子
当日は参加者の皆さまと登壇メンバーの属性なのか、 Twitter のハッシュタグ がとても盛り上がっていました。
セミナー全体の様子は、二村さん の 素敵な開催レポート で確認してみてください。
こちらの最前列のくだりなど、パッと見は罰ゲームのようですが…
今日は #a2iseminar に来ています。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) 2019年12月4日
SEO中心のセミナーイベントで聴講側はとても久し振りなので楽しみ!
最前列確保できたのであとは質疑応答で「専門外なので素人質問ですが……」と質問する目標を達成したい!
https://t.co/2Nn0VPshGM
本日はa2iのセミナーに来ました!
— ムラヤマ ユウスケ (@muraweb_net) 2019年12月4日
最前列に着席できて、満面の笑みな辻( @tsuj )はこちらです。#a2iseminar
「Google検索の変遷と事業主&外部パートナーから見たSEOの過去・現在・未来 」@ワイム貸会議室(御茶ノ水)|2019/12/4 (水)https://t.co/mJ34OlJc05 pic.twitter.com/L3VFFhtXAw
神からのプレッシャー
— 石川けい (@kayjya) 2019年12月4日
#a2iseminar pic.twitter.com/591Ail3gmC
最高の構図!#seo_takano がんばれー
— MTMT (@mtmt_amts) 2019年12月4日
#a2iseminar pic.twitter.com/Eg0uHSM4Vr
実は 2 人とも、ちゃんと我々登壇メンバーを応援してくれてました!(たぶん)
高野さーん!#a2iseminar pic.twitter.com/8WHaYDzA6R
— ムラヤマ ユウスケ (@muraweb_net) 2019年12月4日
村山さんと辻さんが、ド正面からカメラ構えて撮影してくる。 #a2iseminar pic.twitter.com/H34ynNtnc0
— 石川けい (@kayjya) 2019年12月4日
QAセッションはじまりましたー#a2iseminar pic.twitter.com/tQ1mXrFgI0
— ムラヤマ ユウスケ (@muraweb_net) 2019年12月4日
個人的にはとても緊張しつつ嬉しくもあったのですが、SEO や Web への真摯な姿勢において尊敬してやまない辻さんと、アクセス解析をちゃんと勉強するきっかけをくれた村山さんが最前列で見てくれているというのは、長丁場のセミナー初登壇としては恐悦至極であり、Twitter で見えない範囲でも温かいコメントをいただいていたのは念のために記しておきます。(マジですよ)
辻さん、村山さん、本当にありがとうございました!
笑顔溢れるセッションで、楽しい。#a2iseminar pic.twitter.com/1Er3BDXICP
— 石川けい (@kayjya) 2019年12月4日
そして改めて、a2i の皆さまとご来場いただいた皆さまに感謝いたします!
それでは、またいつか!